ギリシャ危機の台頭でユーロ圏共同債が実現か

ユーロ圏共同債の現実味

市場は財政同盟の結成を求めているが、その実現には、各国の国民と議会の賛同を得て、それぞれの憲法の改正が不可欠で、その政治的手続きは入り組んでいる。これに関連する提言は数えきれないo-すべてのユーロ加盟国の国債にユーロ圏諸国全体あるいはその数力国による共同債務保証を付けて、「ユーロ圏共同債」を発行する案も検討されている。

 

ユーロ圏共同債支持派は、この方式なら欧州での国債のデフォルトが発生する可能性が排除されるので、投資家の信頼を一気に取り戻せる効果があると強調する。共同債についてはいくつかの方式が提案されているが、共同債が導入されればユーロ圏諸国のドイツ国債とのスプレッドの大幅拡大が解消される可能性がある。それは、各国が発行する国債のスプレッドは、それぞれが提供する信用力の低い加盟国への保証比率を反映したものとなるからだ。

 

ユーロ圏共同債市場が実現すれば、米国債市場の真の欧州版の誕生となる。ユーロ圏共同債市場は規模が大きく、流動性も十分なものとなるだろう。さらに、ユーロは多くの投資家の間で準備通貨としての地位が確立されていることから、ユーロ圏共同債であれば、スペインやイタリアに対して行われた債券自警団による攻撃を防御できる。いうまでもなく、ユーロ圏共同債に関することは、現時点では、理論上はこうなるだろうという話に過ぎない。

 

ユーロ、圏共同債についてはいろいろな方式が提案されているが、共同債をこれまで各国が独自に発行してきた国債と分離し、それらに対する優先債として扱えば、共同保証方式によるユーロ圏共同債の早期実現が可能だという点は、ほとんどの提案に共通する。多くの案は、発行窓口を一本化して、債務残高の対GDP比を制限するために国別の発行上限を決めることも求めている。国債市場を「レッド」と「ブルー」の2種類に分ける考えもある。「ブルー」はユーロ圏各国のGDPの60%相当までを発行限度とする共同債務保証付きの優先債で、「レッド」はこの限度を超える共同保証なしの発行を意味する。後者の場合、投資家が返済を遡及する相手は当該国のみとなる。「レッド」債は銀行が発行する劣後債と似たようなものになる可能性があるが、そうなれば「レッド」債は信用状況の悪化への「早期警戒情報」(利回り上昇)を発する機能を担うことになる。

 

ユーロ圏共同債に関連していえば、さまざまな有害証券を開発してきた金融機関の新商品開発チームにとりわけ今後の歳入、国有資産の売却が新発債の債務保証としてどこまで利用可能かを把握する課程で、出番が回ってくるかもしれない。

 

非常に非現実的で世離れしたような話と思われそうだが、実現する可能性がある。実際、市場ではユーロ圏共同債の実現を求めて欧州諸国の政府に圧力をかけているようだ。8月16日の独仏首脳会議で、メルケル首相とサルコジ大統領はユーロ圏共同債について何もコミットをしなかったが、それを否定することもなかった。

 

独仏首脳会議は、「トービン税」(ノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・トービン教授が投機目的の短期取引を抑制するために提唱した課税案)の導入を改めて提案したが、そのこととは別に、同会議は、ユーロ圏諸国の政府が一層の財政規律と均衡予算を義務付ける新しい法律制定に不可欠な憲法改正への道を進み始めたという印象を与えた。これは、欧州が予算編成を含めた域内経済政策統合に一歩近づくための策が打ち出されたことも意味する。イタリアとスペインはこれに賛成の意向を示している。

 

もちろん「言うは易く行うは難し」だ。市場では、独仏の動きは両首脳の自主的な動きとは到底思えず、イタリアとスペインの国債の値崩れ阻止のためにECBに両国の国債の購入を踏み切らせる条件だったとみなしている。いずれにしろ、財政規律と均衡予算を義務付ける法律制定の動きに他の国が追随するかを見守る必要がある。

 

均衡予算編成を義務付ける法の制定には長い時間を要する。投資家は未定の話を鵜のみにはしない。フランスとドイツはかつて、年間財政赤字と債務残高の対GDP比率が決定される前に欧州安定・成長協定(1997年採択)に署名した。両国はその後、それぞれの財政事情が協定違反状態となったときには、協定を無視する態度に出た。8月の独仏首脳会議に関していえば、両国が何かを提案したとしても、財政危機の渦中にある国への投資家の次の攻撃を未然に防止できるものではない。しかし、予想とは正反対に、欧州関係国の政府が均衡予算編成の実現に向けて協調政策をとるようなことになれば、ユーロ圏共同債の導入がずっと現実味を帯びてくることは間違いない。

日経平均は昨日までの上昇によってテクニカルポイントに近づいている。一目均衡表の雲は8700-8750円辺りに位置しており、来週にはねじれを起こす。強弱感は対立しやすいところであるが、これを捉えてくるようだと、年末高への期待感が一層高まることになりそうだ。週末要因から利益確定の流れに向かいやすいが、今回の日米欧の世界主要6中銀によるドル資金供給での協調策によって、リスク資産への再投資の動きも次第に強まるとみておきたい。ヘッジファンドの決算に絡んだ売りも一巡しているとみられ、利益確定で上げ一服の局面では押し目狙いを意識したいところ。為替相場(FX)では一段のドル高も予想される。