膨らむ債務残高に無為無策

膨らむ債務残高に無為無策

サブプライム問題が2007年夏に表面化して、金融危機を引き起こしてから4年を経た。2010年5月のギリシャ国債暴落を引き金とする欧州のソブリン債務危機が発生してからほぽ1年半になる。

 

それぞれの危機発生時の不安は今も残ったままだ。欧米諸国は、市場が膨大な債務に持ちこたえられない日が必ずやってくることを以前から認識していた。しかし、将来も穏やかな成長を維持するために政府借り入れを大幅に増やしてきた。その長年の財政赤字に対する痛みを伴う抜本的な是正はいまだに行われていない。

 

市場では時折パニックが発生するが、その多くは欧米諸国が抱える膨大な公的債務への不安を反映したものだ。ドイツ銀行のアナリスト、ジム・リード氏は、過去20年から30年の間に築き上げられた欧米金融システムが完全に存続不能となる可能性について、市場のコンセンサスができつつあると指摘する。そうした見方は市場の大変動を意味し、市場参加者の圧倒的多数がこれまで慣れ親しんできたすべてが見直されるというのがリード氏の意見だ。

 

リード氏をはじめとするドイツ銀行のアナリストチームは、国別の債務残高のGDP比率を示すチャートでは、公的部門の債務だけではなく、民間部門の負債との合計額を使っている。官民負債総額をベースに対GDP比を計算すると、例えばフランスは165%と、1998年の単一通貨「ユーロ」誕生前の58%の12.5倍となっている。フランスにとっての救いは、同国の対GDP比が欧州周縁諸国、英国、米国ほどはひどくはないことだ。

 

それでも、8月には、イタリアやスペインほどではないものの、フランスにも市場の関心が一時的に集まり、とくにソシエテ・ジェネラルの株式とCDSが大量の売りを浴びた。ソシエテ・ジェネラルの財務状況に関する悪い噂が流れたからだ。 ECBによる上限なしの流動性供給保証に変わりがないことが確認されると、ソシエテ・ジェネラルの株価とCDSの相場は元の水準に戻った。シティグループのマット・キング氏はCDS市場に関しては、ソシエテ・ジェネラルについてはロング(買い)だが、フランスについてはショート(売り)を推奨している。

 

ユーロマネーは2010年4月の欧州国債の大暴落を報じた際に@債務残高の対GDP比が高く、通貨の切り下げができない状況にある国は5%以上の金利でも長期債の発行が困難になる、A最終手段としてデフォルトを宣言する選択肢があるものの、1年以内に何らかの再建策、それも非常に魅力的なものが打ち出されているはずだと指摘した。当時の市場関係者の反応は、イタリアとスペインの国債のドイツ国債に対するスプレッドが75ベーシスポイント(bp)から100bpであれば対応可能だが、300bpから400bp、あるいはそれ以上になれば深刻な事態に陥るというものだった。

 

それから13ヵ月後、民間債務の現在価値の21%の免除を含むギリシャ向けの債務再建策がまとまった。 2011年8月末時点で、スペインとイタリアの10年国債の利回りは5.0%と5.11%で、ドイツ国債利回りをそれぞれ285bpと296bp上回っていた。ギリシャ国債は額面の52%で取引され、フランス国債(OAT)のドイツ国債とのスプレッドは66bpだった。

 

米債券市場では、国債発行限度(借り入れ上限)の引き上げをめぐる議会での攻防が終結した後の8月中旬、UBSが攻防の米国債市場へのプラス効果を指摘するリポートを流した。米会計年度は9月に終わるが、当該年度の市場性国債の発行総額は1兆1690億ドルに達する計算となる。これは前年度より約2000億ドル少ない。一方、9月までの残り期間に民間部門の新規社債発行は予定されていない。調達サイドでは、米財務省の起債総額の72%の約8450億ドルが、連邦準備制度(国庫)のバランスシートに組み入れられることになっている(当時)。ちなみに前年度は市場性国債の起債総額のわずか3%、440億ドルが国庫に組み入れられただけだった。

日経平均は昨日までの上昇によってテクニカルポイントに近づいている。一目均衡表の雲は8700-8750円辺りに位置しており、来週にはねじれを起こす。強弱感は対立しやすいところであるが、これを捉えてくるようだと、年末高への期待感が一層高まることになりそうだ。週末要因から利益確定の流れに向かいやすいが、今回の日米欧の世界主要6中銀によるドル資金供給での協調策によって、リスク資産への再投資の動きも次第に強まるとみておきたい。ヘッジファンドの決算に絡んだ売りも一巡しているとみられ、利益確定で上げ一服の局面では押し目狙いを意識したいところ。為替相場(FX)では一段のドル高も予想される。