ギリシャは債務再建の終着点ではない

ギリシャは債務再建の終着点ではない

ユーロ圏17力国は7月21日の首脳会議で債務危機に陥っているギリシヤへの第2次金融支援で合意した。しかし、ユーロ圏の一部の国々は、支援に合意したものの、ギリシヤと同じ支援策を自国も求めるべきか否かをめぐってジレンマに陥っている。7月の合意で、欧州のソブリン危機が新たな段階を迎えた。今回は、公的部門の債権者が元本返済保証付きで返済期間の延長や金利引き下げなどの条件緩和に合意したのみならず、民間の金融機関や投資家も同様の合意に応じた。その結果、民間部門が保有するギリシヤ債券の損失額は現在価値の21%に及ぶ。

 

ギリシャ支援合意は他国に波及するのだろうか。長年、国際債務問題にかかわってきた関係者によると、今回の合意は、1980年代の中南米累積債務問題の時のパターン(先進国の債権銀行がメキシコに譲歩し、それがブラジルからの同様な譲歩の要求を招く)に似ているという。

 

ギリシャ支援合意と同時にユーロ圏首脳陣による声明が発表されたが、内容に乏しいものだった。ギリシャの成長と投資促進への包括的な戦略が必要だと述べながら、具体策には触れなかったからだ。

 

ユーロ圏諸国は声明を通して、今回の支援策がギリシャのみに適用されることを明確に宣言した。声明には、他のユーロ圏諸国のすべてが「それぞれの国債を完全に償還するという確固たる決意」と「持続可能な財政運営と構造改革への取り組み」を「厳粛に再表明する」とも書かれていた。

 

断固たる決意と聞くと、欧州連合(EU)創設に関するマーストリヒト条約が定めた単年度財政赤字をGDP比3%以内とする単一通貨への収れん基準のことを思い出す人が多いはずだ。当時、いくつかの国は、悪名高いエンロン社並みの粉飾手法を使って政府歳入を増やして基準達成を図った。「断固たる決意」で収れん基準を定めたのにフランスとドイツは2003年にGDP比3%以内という基準を超える財政赤字を出した。つまり、今回の「断固たる決意」も結局はうやむやに終わるのではないかという疑念がぬぐえないというわけだ。

 

欧州首脳陣は、ユーロ圈で起きていることが1980年代前半の中南米債務危機と比較されることを嫌がる。それも、時にはほとんど冷静さを失うほどの剣幕で反応する。当時を知る関係者は、1年前に欧州の政策担当者を前にどこかの国がソブリン危機に陥ると、それは感染症のように周辺国に拡大すると警告をしたところ、出席者たちから取り越し苦労だと笑われたという。

 

7月の首脳会議での合意は、ギリシヤ以外の欧州各国が償還期限を迎える国債を期日に全額償還していけることを示唆しているのかもしれない。確かにギリシヤの場合、非常に高い債務残高の対GDP比率、巨額の単年度財政赤字、極めて柔軟性を欠く経済(自力再建どころではなく、不況は3年目に入っている)という同国特有の悪条件が重なり合っている。今回の合意で、ギリシヤ政府がユーロ圏首脳会議の要求に応じて成長と投資促進のための戦略作りに苦労した事実とともに国債償還ができない事態に追い込まれていたことが明らかになった。

 

ギリシャとまったく同じような3つの悪条件が揃っている国は欧州には存在しない。イタリアの債務残高のGDP比は高いが、単年度財政赤字は少ない。スペインでは単年度赤字額は大きいが、債務残高のGDP比は低い。こうして見比べると、最悪の事態にはならないだろうと期待してもよい。しかし、懸念は残る。イタリアの単年度赤字は確かに少ないが、その成長率も低い。スペインの債務残高は、金融機関と地方政府の負債が国の偶発負債としてみなされれば、さらに膨らむことになる。

 

巨大で均質・単一の欧州政府債市場の夢はすでに打ち砕かれている。財政同盟が存在しない以上、各国はそれぞれドイツ国債に対する一定金利を上乗せして起債をしなければならない。個々の国債市場は流動性が低く、規模も小さい。そのうえ、投資家は自己裁量でいつでも自由に撤退することができる。投資家がいなくなれば、当該国の政府は巨額の借り換え(ロールオーバー)リスクに直面する。

 

国内銀行が破綻したアイルランドと景気が後退気味のポルトガルは、投資家の要求通りのリスクプレミアムを甘受するか、ギリシャのように金融支援に依存するかの選択を迫られるだろう。どの国も緊縮政策は簡単に打ち出せない。国民がそれを望まないからだ。どこかの国が債務免除を受けることを知れば、他の国の国民は自国がなぜ同じような恩恵を得られないのかの理由を知りたがるだろう。

日経平均は昨日までの上昇によってテクニカルポイントに近づいている。一目均衡表の雲は8700-8750円辺りに位置しており、来週にはねじれを起こす。強弱感は対立しやすいところであるが、これを捉えてくるようだと、年末高への期待感が一層高まることになりそうだ。週末要因から利益確定の流れに向かいやすいが、今回の日米欧の世界主要6中銀によるドル資金供給での協調策によって、リスク資産への再投資の動きも次第に強まるとみておきたい。ヘッジファンドの決算に絡んだ売りも一巡しているとみられ、利益確定で上げ一服の局面では押し目狙いを意識したいところ。為替相場(FX)では一段のドル高も予想される。